株式分割を発表した企業は2023年度で190社以上にのぼり、中でもNTT(日本電信電話)が1株を25株に株式分割するという発表は大きなインパクトを与えた。株式分割は企業や投資家にとってどのようなメリットがあるのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第88回は、「株式分割」について。
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先日、上場企業の株式分割が増加しているという記事を見かけました。たしかに、昨年あたりから、株式分割を行う企業が増えているという肌感があります。株式分割が増えている理由や、株価への影響を解説します。
株式分割が増えている理由
2023年度に株式分割を発表した企業は、前年比で6割多い191社。インパクトを残したのは、5月12日に1株を25株に株式分割すると発表したNTT(日本電信電話)です。分割の目的は、新NISA制度の導入を踏まえ、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層を幅広い世代に拡大することでした。
発表当時、株価は4000円程度でしたので、25分割すると160円程度。1単元の100株なら1万6000円で買えることになります。
NTTが株式分割の目的に挙げたように、株式分割のメリットは、株価が安くなることで株式が購入しやすくなることです。株式は100株単位で売買されますが、東京証券取引所では、望ましい投資単位の水準として、50万円未満、つまり株価5000円未満を明示しています。株価が上昇して、5000円を超えてきた場合は、分割することを推奨しているということです。
これは、法律ではないので従わない場合に罰せられるわけではありません。ただし、50万円以上で株式が売買されている場合には、事業年度経過後3か月以内に、50万円未満の水準へ移行するための、当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けられています。2024年3月末時点では、上場企業の93.3%の会社が50万円未満ということなので、おおむね従っていることになります。
とくにここ1年で株式分割を発表する企業が増えたのは、NTT同様に、新NISAを意識し、若い投資家を取り込みたいという目的があると思われます。実際、NTTは分割後に40代以下の株主比率が高まったそうです。
また、株式数が増えることから、株主数も増えやすくなります。NTTは分割前から7割増加、分割を実施したほかの企業も同様に株主数は増加しています。