共働き家庭が増えたことによる、塾に求めるものの変化
これはある個別指導塾の幹部がいったコメントだ。
「塾を選ぶには、難関校に入れてくれる塾か、“学童機能”も求めるかを選ばないと」
塾には2種類がある。まず、SAPIXやグノーブルといった「難関校対策に最適化したオリジナルテキスト」を作成し、高い合格実績を上げる塾だ。それらの塾は筑駒や御三家の合格実績でプロモーションができるので「学童機能」は付けない。自習室すらないし、授業時間も短い。
もう一つの種類の塾は、受験対策用の学習指導をすると同時に、自習室もあり、補講もあり、「子どもを長時間預かって勉強をさせる」という機能が付くところだ。大半の塾がこれに当てはまる。
「子どもが御三家に入ることが私の自己実現」というタイプの専業主婦ならば前者を選ぶだろう。しかし、共働き家庭の大半は「うちは御三家とかじゃなくていいから塾にお任せしたい」と後者を選ぶのではないだろうか。もちろん、共働き家庭も「なにがなんでも御三家」と目をギラつかせることもあるが、その層についてはまた別の機会で言及したい。
前回記事で書いたように、東京23区内の子育て世帯の年収は、2017年から2022年で23.4%も増えている。この理由は共働き世帯が増えたからに過ぎないだろう。かつて、東京で専業主婦家庭が多かったのは、通勤に時間がかかるため子育てとの両立ができなかったこと、そして、男性の収入が多かったからだ。夫が稼げば妻は働かずに済んでいた。
しかし、コロナ禍でのリモートワークの普及もあって、妻も働きやすくなっている。そして、人手不足で仕事はいくらでもある。しかも社会保険料の増加で夫の手取り収入が減っているとなると、妻も働きに出るのは当たり前になる。この共働き家庭の増加が「中学受験」の追い風なのだ。