総額500万円かけて第3志望の学校に進学した心境
結局、総額500万円ほどかけて、息子は第3志望の偏差値50半ばの学校に進学をした。第1希望は芝、第2志望はサレジオだったが手が届かなかった。
「個別指導の先生は受験校選びでも丁寧にアドバイスをしてくれました。私が受けさせたいと希望した学校は『近年、奇問が増えていて、その奇問の対策をしてきた子たちが勝つ構造になっているから避けた方がいい』といわれました。そうやって根拠を示してくれるのがありがたいと思いました」
そして、ほんのすこし意地悪な表情になってこういった。
「個別指導塾を薦めてきたママの娘ちゃんも同じぐらいの偏差値の学校だったんです。息子よりは偏差値が高かったのに」
たしかに重課金に誘い込んだママの子の受験だけが大成功だったら理不尽さを感じていただろう。
相場よりも200万円ほど多く重課金して、第3志望の学校に進学をする。ただ、その学校は実に評判のいい学校でもある。それを伝えるとA子さんは「そうなんです。文化祭にも息子と行って気に入っていたんです」はじめて心からの笑顔を浮かべた。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。