車体カメラから取り込んだ画像や、ボディに埋め込まれたセンサーやレーダーから送られてくる膨大なデータを瞬時に処理しているのがエヌビディアのGPUだ。
自動運転のレベルが上がるにつれ、半導体に求められる処理速度も上がる。自動運転のレベルがどの程度のスピードで進化するか、その鍵を握っているのもエヌビディアということになる。
こうしてエヌビディアの半導体「A100」は、AI向けデータセンターのデファクト・スタンダード(業界の基準)になった。しかし、成長分野にはライバルが群がる。にもかかわらず、エヌビディアが92%という途方もないシェアを握っているのには訳がある。
性能そのものが優れているのに加え、エヌビディアはユーザーに、「CUDA」というAI開発ツールを提供している。このツールの使い勝手が「一度使ったらやめられない」と言われるほど良いため、離れられなくなっているユーザーも多い。
この「鉄壁の防御」を破るため、2023年9月にはソフトバンクが大株主の英アーム、富士通、グーグル、インテル、サムスン電子といった世界の半導体大手が、CUDA対抗の開発ツール作りを目的とした業界団体「ユニファイド・アクセラレーション・ファウンデーション」を立ち上げた。
世界の半導体関連企業が束になって挑まなければならないほど、エヌビディアは強いのである。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に『起業の天才! 江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。
※週刊ポスト2024年4月26日号