日本一強の分野
半導体産業のなかで日本企業が依然として強い分野はある。半導体素材の信越化学工業、半導体製造装置の東京エレクトロンやディスコなどだ。これらの日本メーカーによる素材や装置がなければ、TSMCもサムスン電子も半導体を製造することはできない。
ラピダスも導入予定の最先端「紫外線露光装置」(ウェハー表面に回路パターンを焼き付ける装置)はオランダのASMLが世界シェア100%となっているように、分野によっては台湾や韓国などの半導体強国に勝る国がある。日本もその一つになればよい。
開発に10年かかる素材や製造装置などは日本企業の得意分野であり、その技術に絞って磨いていけば、海外勢に大きく後れを取っている半導体の製造・開発に国の税金を使わずとも、世界の半導体産業のなかで存在感を増すことはできる。最終製品のチップだけに目が行くのは素人だ。産業全体の日本の占有率を念頭に置いた半導体支援策を打ち出すべきである。
「夢よもう一度」とばかりに経産省の官僚が旗振り役となって、税金の大盤振る舞いを続けるのは即刻やめてもらいたい。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年4月26日号