設備の更新、買い替えの促進は需要の先食いか
こうして正しく設定されたプロジェクトに対して、中央の主管部門、地方政府が財政資金を投入したり、減税を実施したり、金融機関からの融資を受け易くしたり、経営者に対して事業見通しに自信を持たせたりすることで、短期的には需要不足を解消し、長期的にはイノベーションを加速させるとしている。
理屈はよくわかるが、しかし、設備の更新、買い替えの促進は、需要の先食いにしかならないのではなかろうか。そもそも国家が、いとも簡単に総需要を有効にコントロールなどできるのであろうか。
現在の不況は、財務レバレッジを大きく拡大させてきた不動産企業に対して国家が財務指標に基づき厳しく規制をかけたことが発端となり生じたものだと認識している。国家による供給側への強力なコントロールによる影響が経済の各主体、各市場に伝わり、最終的にここまで総需要に悪影響を及ぼすと当局は当初から予想できたのであろうか。
いろいろと疑問は残る。しかし、はっきりしていることは、こうした政策の成否こそ社会主義の真の実力を示す有力な証拠の一つとなりそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。