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【日本社会を襲う人手不足問題】外国人人材受け入れ拡大がもたらす「若年層は外国人、年配者は日本人」のいびつな社会

外国人人材受け入れ拡大は何をもたらすのか

 現在、政府や経済界が取り組みを急いでいるのが、外国人人材の受け入れ拡大である。厚生労働省によれば、2023年10月末時点の外国人労働者は204万9000人だ。2013年の71万8000人と比べて2.85倍増となった。

 政府は、中長期滞在が可能な在留資格「特定技能」について、2024年度からの5年間の受け入れ枠を従来の2.4倍にあたる82万人へと一気に拡大させた。就業できる対象職種も広げる。
 
 JILPTは2040年の外国人労働力人口について、「ゼロ成長・労働参加現状シナリオ」では414万人、「成長実現・労働参加進展シナリオ」では453万人を見込んでいる。
 
 だが、人口が大きく減っているわけではない諸外国とは異なり、日本において外国人労働者の受け入れはかなりの副作用を伴う。

外国人労働力人口

外国人労働力人口

 労働者として期待する外国人の中心年齢層は20~30代だ。この年齢層の日本人は激減していくため、大規模に受け入れるほど日本人の占める割合は低下することになる。こうした点に配慮せず、目先の人手不足ばかりにとらわれて受け入れ拡大を続ければ、やがて日本は「若い年齢層は外国人中心、年配者層は日本人中心」という極めていびつな社会となりかねない。

 社人研は2060年代後半に総人口の1割を外国人が占めると推計しているので、これを基に計算すると、2040年代半ばには20~30代の15%弱が外国人となる。2070年には2割弱だ。すでに多くの国が移民や外国人労働者の大規模受け入れによるトラブルや社会の分断に悩んでいる。国民の理解を得ずに受け入れ拡大を急げば、日本も混乱を来すこととなるだろう。

 来日する外国人人材が、日本企業が求める水準を満たす保証はない。今後の日本は高齢化が激しく進む。課題が山積する日本社会が外国人労働者の目にどう映るのかも考える必要があろう。外国人によって日本人就業者の減少を補充する政策は、現時点で考えるほど簡単なことではない。これも限界がある。

 外国人人材の受け入れを否定するものではないが、同時に別の政策を進めなければならないということだ。

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