4月11日、日本橋高島屋で開催された『大黄金展』で約1000万円の純金茶碗が盗まれたニュースは多くの話題を集めた。その後13日に容疑者が捕まり、15日には茶碗も発見されたが、大勢の来客者で混雑するデパートで、高額な品を盗む大胆な犯行がなぜ可能だったのか。また、全国各地のデパートで定期的に「黄金展」が開かれているが、そのビジネスモデルはどのようなものか。
大手デパートで働く女性は、デパートの催事事情についてこう語る。
「デパートの催事は重要な集客手段のひとつ。上層階で開催されるイベントに人を集め、下の階での買い物を促す“シャワー効果”を狙うのはデパート戦略の王道ですが、全ての催事が必ずしも大混雑というわけではありません。
もちろん、人気の高い催事もあり、京王百貨店新宿店の『駅弁元祖有名駅弁と全国うまいもの大会』を筆頭に、北海道展に代表される各地の物産展、スイーツフェア、英国展やイタリア展などは非常に混み合いますが、名宝展や下着フェアなどは、天気が崩れるとガラガラなことも。黄金展も平日は空いています」(大手百貨店社員。以下同)
今回の盗難事件が発生した際も、「訪れていた客の数はまばら」だったと報じられている。しかし、黄金展は全国のデパートで定期的に行われている。シャワー効果が望みにくい催事なのに、なぜ各地で開催されるのか。
「大きな理由は、来客が少なくても単価が高いからです。展示品の中には1000万円を超える品もあり、期間中に数個売れれば十分に売上は立つ。物産展は確かに混み合いますが、客単価はせいぜい数千円なので、催事としての優劣は比べられません。
メディアで取り上げてもらえるのも魅力です。黄金展には“ウン千万円の仏具”や“純金のアニメキャラ”といった目玉商品が必ずあり、新聞やテレビに話題として大きく報じてもらえます。その他、デパートとは関係の深い貴金属業界との顔つなぎという意味合いもありますし、業者にとっては金製品の買い取りにも旨味があるでしょう」