富裕層が改めて“金”に注目する理由
大勢の集客を呼び込んで数字を積み重ねるやり方もあれば、“一発長打”で売上を伸ばすやり方もあるということ。金価格は昨年1グラム1万円を突破し、今年4月には1万3000円を超えるなど、ますます上昇しているが、超高額な純金製品には富裕層が興味津々だという。
「貴金属店には仏具コーナーがありますが、相続税法で仏具は“祭祀財産”として非課税になるため、相続税対策として高価な仏具を買う節税テクニックも注目されています。ウチのデパートでも高額な“お鈴”が品薄になり、発注から受け取りまで数か月かかるケースがありました。ちなみに担当者によれば、24金のお鈴もあるものの、“鳴り”は18金の方が良く、実用性は18金に軍配が上がるそうです」
もっとも今回盗まれた茶碗の場合、販売価格が1000万円超だったのに対し、容疑者が売りさばいた際の買取価格は約180万円。重さは380グラムなので純粋に金の価値なら490万円ほどになる。仏具も同様にデザイン料や加工料が乗っかっており、本当に相続税対策になるかどうかは、最終的には税務署の判断となるようだ。
今回の盗難騒動には、催事の特殊なビジネスルールも関係している可能性があるという。
「デパートによってスタイルが違うかもしれませんが、一般的に催事の売買は『消化仕入れ』と言って、消費者が商品を購入した時点で、その商品をデパートが納入業者より仕入れたとする取引。盗難の直接対応をするのは業者であることが多いので、デパートの警備に隙が生まれたのかもしれません。
ただ、業界内は今回の盗難事件の話題でもちきりで、失った信用は大きい。現場で接客を優先するあまり、セキュリティがおざなりにならないよう、注意喚起のメールが上司から来ました」
デパートは接客力が命だが、高額商品の取り扱いには改めて注意が必要なようだ。(了)