ファンが理想を押し付ける「ファンハラスメント」
お笑いコンビ『霜降り明星』の粗品は、自身のYouTubeチャンネルなどで、ファンが自分の理想を押し付けるような意見を投げかけることを“ファンハラスメント”と表現している。そんな“ファンハラ”を気にするようになったというのは、神奈川県に住む大学生のBさん(20代女性)だ。Bさんは、10代の頃からお笑いが好きで、頻繁にライブに通っている。
「『あのコンビにはこういうネタをやってほしい』とか、『あの芸人さんはベタな方向に進んでほしくない』とか、自分のなかの理想があるのは確かです。でも、お笑いをやるのは自分ではなく、芸人さん本人ですからね。結局“余計なお世話”になってしまうことも多い。
もちろん予想外の方向に進んでいく芸人さんもいて、推せなくなることもありますが、そういう芸人さんは自然とあまり見なくなるだけ。1人の芸人さんを重く応援し続けて、どこかで好きじゃない方向に進んだらショックが大きいので、できるだけたくさんの芸人さんを応援するようにしています」
満足度の高そうなところに重点的に課金
推し活におけるお金のかけ方を上手く調整することで、推しとの距離感を保つというパターンもある。都内に住む自営業のCさん(30代女性)は、男性アイドルグループのファン。ライブ以外にはあまりお金をかけないようにしているという。
「私の推しはバラエティーにもドラマにも出ているんですが、そのなかには個人的にあまり好きになれない作品もあります。それを見てツラくなるなら、見ないほうが余計な気持ちにならなくて済みます。ライブであれば、ちゃんとファンに向けたエンターテインメントを見せてくれるし、ただただ楽しいんです。
あと、お金をかけて“推し活”をしてる中で、自分の好きじゃないものが提示されたら、結構ヘコんでしまうんです。損した気分になるのも嫌だし、それが積み重なって推し活がつまらなくなるのも嫌。だから、できるだけ満足度の高そうなところに重点的に課金するようにしています。全部の活動をチェックしたい気持ちもありますが、それでネガティブな気分になるくらいなら、捨てるべきものは捨てていこうという感じです」
ファンと推しも“人と人”。お互いを尊重しながらコミュニケーションを取るのは当然のことだ。幸せを生み出す“推し活”だからこそ、最適な距離感を保つための努力が必要だろう。(了)