フランスでは9万人が怒りの声を上げた
年金制度のこうした“改悪”は諸外国でも行われているが、わが国と大きく異なるのは、たとえ小さな変更でもその内容に異議があれば、国民が国に対してハッキリと「NO」を突きつけることだ。
昨年3月には、フランス・パリの共和国広場で、年金の受給開始年齢を62才から64才に引き上げる改革に反対する10回目の大規模デモが行われ、約9万人が参加した。もともと現在の日本と同じ65才受給開始だったものが1980年代に60才に引き下げられ、それが2010年に62才に引き上げられた際も、大規模デモが続いた。
2018年には中米ニカラグアで、社会保障制度の赤字拡大を食い止めるため、労働者の負担を増やすと同時に年金受給額を5%減らす内容に激しい抗議デモが起こった。暴徒化したデモ隊の投石や放火などによって少なくとも24名が死亡し、ダニエル・オルテガ大統領はこれを受けて改革の撤回を表明している。海外では年金の“改悪”は、これほど大規模なデモや暴動が起きるほどの“重罪”なのだ。
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