JR東日本グループが銀行業への参入を発表し、衝撃が広がっている。そこには累計発行数1億枚超を誇る交通系ICカード「Suica」を中心に据えたビジネス拡大の狙いがあるとみられているが、巨大グループの新たな核ともなり得る“Suica銀行”誕生の先に、どんな未来が待っているのか──。【前後編の前編。後編を読む】
「Suica」の累計発行数は1億312万枚、1日の輸送人数は約1459万人──国内最大の鉄道会社であるJR東日本グループが5月9日に金融サービス「JRE BANK」をスタートさせる。
スマホのアプリやウェブサイトで口座を開設することで利用が可能となり、スタート前からその充実した特典が注目を集めている。
「資産残高50万円以上」などの利用状況に応じて、JR東日本営業路線内の片道運賃・片道料金が4割引きになる割引券(年間で最大10枚)や高速バス無料クーポン、系列ホテルの割引特典がプレゼントされるほか、駅のATM「VIEW ALTTE」での現金引き出しが無制限で手数料無料となるなど盛りだくさんの内容で、同社の新サービスへの意気込みの強さが窺える。
なぜ、鉄道会社が銀行業に参入するのか。経済ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。
「国内の人口減少で需要が減り、収益減が避け難いなか、事業の多角化、収益チャネルの拡大はJR東日本にとっても死活的に重要な課題です。そこで、発行数が1億枚超というSuicaのユーザーを自社の様々なサービスに結びつけるために、中継役として銀行サービスを立ち上げたのでしょう。“Suica経済圏”の拡大の狙いがあると考えられるのです。
JRE BANKへの預金で得られる特典を使ってJR東日本の駅ナカ商業施設やホテルを訪れ、そこでSuicaを使用すると同社のポイントサービスである『JRE POINT』が貯まる。そうなると貯まったポイントの特典でまた同社の施設をお得に利用できる。そういったサイクルが充実していけば、グループ全体の大きな収益上昇が見込めます」