「なくなっても構わないお金」だけを投資に回す
もちろん、いつまで働けるか分からない以上、労働収入以外のことも考える必要があります。そこで「支出を減らす」、「投資・運用で増やす」という選択肢が出てきます。
支出を減らすというのは、一言で表わせば「節約」です。現役時代とは収入が違うことを理解して、身の回りの贅沢や、お金のかかる趣味を見直していく。生活の見通しが立たなくなったら、今まで5品食べていたおかずを4品に減らす、ということになる。そんな生活は考えたくないですが、あらゆる支出を少しずつ削る必要も出てきます。
もう一つの「投資・運用で増やす」ですが、投資にはリスクが付き物です。投資で1000円を2000円にできるのは、ほんの一握りの人々だけで、ハイリスクな投資は大損をする可能性も高い。
ですから、財布の紐の締め方を見直して、「なくなっても構わないお金」だけを投資に回すことが大切です。年金や労働の収入から考えて、仮に失敗しても生活に支障を与えない金額を投資の上限にしましょう。
できるだけ長く健康を維持し、収入を得る手段を確保しておく。それが豊かな老後、豊かな人生に繋がっていくのです。
【プロフィール】
出口治明(でぐち・はるあき)/1948年生まれ。立命館アジア太平洋大学学長特命補佐。日本生命保険勤務後、2008年ライフネット生命保険創業。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2024年5月3・10日号