年金、相続、投資など、お金にまつわる情報が溢れるなか、これから重要になるのが「資産寿命をどう延ばすか」という視点だ。人生100年時代を迎え、“長生きリスク”と向き合ううえでは、物価高や賃上げ、金利上昇などの最新の動きを踏まえた「資産寿命の延ばし方」を知る必要がある。ライフネット生命創業者で、金融や教養に関する多数の著書がある出口治明氏(76)が指南する。
* * *
「人生100年時代」と言われて久しいですが、寿命が延びるということは、それだけ老後に必要となる資金が増えることを意味します。
今から30年ほど前、55~60歳で定年を迎え、平均寿命は75~80歳という時代がありました。しかし、今は仮に75歳まで働いたとしても、100歳まで生きれば25年もの歳月が残されている。誰もが100歳まで生きるわけではありませんが、そうした可能性を念頭に置けば、「資産寿命を20年延ばす」という考え方が必要になります。
僕が大学を卒業して保険会社に入社した1972年は、社内預金の金利が11%で、6年半で元金が2倍になりました。ところが今は、預金しているだけでお金が増えることはありません。
今年3月、日銀が17年ぶりの利上げに踏み切りましたが、銀行預金の金利は0.05%程度になっただけで、受け取れる利子は雀の涙です。
では、資産寿命を延ばすために何をすべきか。まずは、できる限り長く働き続けて、収入を確保することが最優先の取り組みになるでしょう。
今の70歳は、昔の60歳とほぼ同等か、むしろ元気な人が多い。みなさんもそう実感しているのではないでしょうか。
日本で例えば75歳まで働き続ける人はまだ珍しいかもしれませんが、アメリカやイギリスには定年制がなく、70代で働いているのは普通のことです。これからの日本社会も、そうなっていくでしょう。