田代尚機のチャイナ・リサーチ

【円安はまだまだ続く】日本の輸出産業の競争力低下から読み解く為替レートの行く末

今後需要拡大が見込める領域の日本企業の競争力

 バブル崩壊後、日本の半導体、家電業界は次々と競争力をなくしていったが、それよりも、開発段階では他国をリードしていながら市場化競争ではシェアを奪えなかったリチウム電池、太陽電池、スマートフォン(携帯電話を含む)などの分野が残念だ。AI、自動運転、ネットがらみのビジネスなど、今後需要が大きく拡大するだろう領域についても、日本企業の競争力は強くない。

 米国向けの主要輸出製品について調べてみると、自動車、原動機、建設用・鉱山用機械が上位を占めており、半導体等製造装置がそれらに次ぐ。2023年の対米輸出の増加は自動車や建設用・鉱山用機械の増加によるもので、半導体等製造装置は逆に減少している。

 自動車輸出では日本が長期にわたり世界最大を維持してきたが、2023年には中国に抜かれている。米国市場においても今後、価格競争力のある中国の新エネルギー自動車が日本車のシェアを奪う可能性がある。米国側がブロック貿易を強めるならば、特に秋の大統領選挙でトランプ氏が大統領に返り咲いたりするようなことにでもなれば、米国市場における中国企業の侵食は防げるかもしれないが、同時に日本の対米輸出も影響を受けることになりそうだ。

 エネルギー、資源、農産品は自給には程遠く、雑貨、電気製品など生活に密接にかかわる製品などは主に中国などに依存する中、輸出産業の競争力低下は厳しい。

 経営のスピード(意思決定の速さ)、巨額な設備投資に対する正しいリスクの取り方、直接、間接金融の役割、ベンチャービジネスを生み出す社会全体の活力など、米国、中国、韓国、台湾の優れた部分を取り入れる余地がありそうだ。もっとも、指摘するのは簡単だが、実行するのは難しい。

 経常収支、国際収支が黒字基調だから大丈夫と安易に言える状況ではないように思う。長期的な為替の見通しとしては円安と予想しておいた方がよさそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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