中堅証券会社に注目する理由
新NISAの環境は証券業界にとって強烈な追い風である。証券会社といえば、野村ホールディングス(8604)傘下の野村證券が最大手として健在である。また、最近ではネット系大手証券会社が台頭しており、口座開設数においてはSBI証券が日本一となっている。また、SBI証券と言えば、SBIホールディングス(8473)傘下の証券会社である。今年の新NISAスタートを前に国内株式売買手数料0円を打ち出し、業界に衝撃が走った。
知名度ではこのような会社には劣るものの、業績成長、割安性、配当利回り、財務という着眼点で考えた場合、投資対象として魅力的な銘柄がいくつも存在する。今回は中堅の証券会社を軸に紹介していこう。
【1】極東証券(8706)
都内中心の独立系証券である極東証券は、富裕層向けの対面営業に特化している。同社は1月30日に2024年3月期第3四半期決算を発表して以来、3月に増配の発表、4月に通期業績(速報値)の発表を行い、前年比で売上高+79.1%、営業益は黒字転換し大幅な黒字着地、経常益は7.5倍、最終益、EPS(一株当たり当期純利益)においては3.7倍という大きな成長となっている。利益剰余金は毎年しっかりと積み重なっており、有利子負債倍率においても0.21倍という堅実な財務状況と言える。同社で一際目を引いた点は予想配当利回りが7.31%という点である。PER(株価収益率)は11.1倍、PBR(株価純資産倍率)は0.95倍となっており割安と言える。
これだけ目覚ましい業績成長を遂げ、財務もしっかりしている会社であり、割安性も十分、さらに高配当という条件が揃っているため、投資妙味は十分あると言えるだろう。
【2】岩井コスモ証券(8707)
岩井コスモ証券は関西最大手。対面主体にネットも展開。米国株に注力している同社は、4月19日に2024年3月期の通期業績(速報値)を発表し、前年比で売上高は+22.1%、営業益+59.3%、経常益は+54.9%、最終益は+55.8%、EPS+55.9%と、売上、利益ともに大幅成長を発表した。経常益においては18期ぶりの最高益更新となった。剰余金も積み重なっており、有利子負債倍率は0.12倍と低水準で、財務内容も安心感がある。配当利回りも5.58%と高く、PERは9.1倍、PBRは0.82倍というのも非常に割安な水準と言える。
前述の極東証券と同様、業績成長、財務健全、割安、高配当、いずれも揃った銘柄と言えるだろう。
【3】水戸証券(8622)
水戸証券は北関東地盤の独立系証券。地元密着の営業に強みを持つ同社では、4月16日に2024年3月期決算(速報値)を発表し、前年比で売上高+30.0%、営業益が黒字転換し大幅黒字、経常益15倍、最終益3倍と、売上、利益とも大幅成長を発表した。
利益剰余金も安定しており、有利子負債倍率は0.07%と低水準。財務内容も安心感がある。利回りも5.1%と高配当であり、PER13倍と割安とは言えないものの、PBR0.76倍は割安であり、今後の株価対策にも期待できる。