新NISAブームにも冷や水
問題はそれだけではない。
「岸田政権は『資産所得倍増プラン』をぶち上げ、今年1月から運用益などが無期限で非課税になる『新NISA』を恒久化して、“貯蓄から投資へ”の流れを本格的に進めようとしている。多くの人が新NISAによる自助努力で資産を増やそうとしている矢先に、金融所得も社会保険料の算定対象にするというのは、冷や水を浴びせる以外のなにものでもない。政策として悪手としか思えない。
さすがに“非課税”を謳っている以上、『新NISA』での譲渡益や配当に税金がかかるという話にはならないと思いますが、“社会保険料は厳密には税金じゃない”といった理屈で、新NISAで得られた配当なども社会保険料算定に用いられる可能性だってある。“非課税ですよ”という誘い文句で制度を利用する人を増やしておいて、後から社会保険料を徴収するという話になるなら、悪徳商法のようなやり口です。
さらにいえば、現時点では会社員の健康保険は賃金のみで決まっていますが、これに金融所得が加算される可能性もゼロではない。今回の検討開始が“アリの一穴”となってなし崩し的に対象範囲が拡大されかねません」(同前)
政府は昨年末に閣議決定した社会保障の改革工程で、国民健康保険などの保険料負担を巡る不公平な仕組みの是正について、「2028年度までに実施について検討する」としている。国民のささやかな自助努力まで踏みにじるような“改悪”にならぬよう、議論の行方を注意深く見守る必要がある。