ファッションを変えたら被害が減った
一方、長年、駅構内での迷惑行為に苦しめられてきた会社員女性・Bさん(30代)は、あることがきっかけで被害に遭う回数が激減したという。
「幼いころから、何度も“ぶつかり男”に遭遇しています。友人の女性も、『よくぶつかってこられる』と話していますし、ターミナル駅を利用する女性は少なからず、被害にあったことがあるのでは。
ぶつかられるだけならまだしも、すれ違いざまに手をぎゅっと握られたり、耳元で卑猥な言葉を囁かれたこともあります。一瞬で通り過ぎてしまうため、追いかけることも声をあげることもできず、本当に気味が悪かった。とくに、通勤中のオフィスカジュアルのような格好をしているときに、よく狙われました。
ただ、職場が変わり、黒髪でフェミニンな服の系統から、メンズライクなファッションに変えて以降、被害がグッと減ったんです。インナーカラーで髪の毛の内側を金髪にしたり、革のジャケットやドクターマーチンなどを履くようになってから、ほとんどぶつかられなくなりました。その他の迷惑行為も年に1回くらいに減りました。結局、犯人は見た目が弱そうな女性を狙っているんでしょうね」(Bさん)
フラストレーション解消か、ミソジニーか
Bさんが指摘するように、“ぶつかり男”の被害に遭った女性のなかには、「ファッションを変えたら被害が減った」という人は少なくない。
人権関係の相談窓口で勤務しているカウンセラーの女性・Cさん(50代)は、このような迷惑行為や暴力行為を行う人の心理について、次のように説明する。
「街中や駅構内でのこれらの事案は、中高生からシニアまで、幅広い世代の女性がターゲットとなっています。通り過ぎる際に胸を揉む、わざと胸にひじや肩をぶつける、お尻を鷲掴みにする、妊婦さんを狙う、といった悪質な例もあります。
日頃のフラストレーションを自分よりも弱い存在にぶつける、いわゆるストレス解消行為として行われている場合もあれば、ミソジニー(女性蔑視)により、年齢問わず女性をターゲットにする場合もあります。男性である自分よりも肉体的に弱く、また抵抗の声をあげづらい存在がとくに被害に遭いやすい。
もちろん、被害に遭ったら駅職員さんに伝えて被害届を出すこともできます。今では駅構内に防犯カメラも多いですし、犯人を特定することも不可能ではありません。泣き寝入りする被害女性が減ることを願っています」(Cさん)
ぶつかり行為だけでなく、さらに悪質な加害行為の被害にあっている女性たちがいる。被害を目撃した際には、周囲が手を差し伸べるなどのサポートも必要だろう。