上司から部下に対するパワハラが常態化している職場では、部下が退職を希望しても、やめさせてもらえないというケースもある。こういった場合、即日退職することはできないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
息子が勤務する店の店長のパワハラについて相談です。店長は、息子にハードなスケジュールで働かせたり、勤務時間をバラバラにしたり、嫌がらせとしか思えないシフトを組んだりします。「その日はシフトに入るのが難しい」などと言うと攻撃がさらに激しくなります。
息子は退職を申し出ましたが、「年末までやめさせない」と言われました。即日、退職することはできないのでしょうか。(和歌山県・60才・主婦)
【回答】
退職以前に、パワハラを問題にできます。【1】優越的な関係を背景とした言動で、【2】業務上必要かつ相当な範囲を超えており、【3】その結果、労働者の就業環境が害されるという3要件が備わっていればパワハラです。
店長は店員に対して優越的関係にあります。店長が特定の店員に対して命じる業務が、単に長時間や負担が大きいというだけでなく、不公平なシフトや実行困難な過大なものであれば、【2】の要件を満たし、その結果、やめたくなったのは就業環境の悪化そのものといえます。ですから、店長の行為は厚生労働省の定義どおりのパワハラといえます。会社は労働施策総合推進法に基づき、パワハラ防止のために相談窓口の設置などの施策を義務づけられています。一度、会社に相談してはいかがですか。
退職の決意が固い場合、店長が「年末までやめさせない」と言っても、会社はいつまでも労働者を縛ることはできません。