北海道・ニセコの“バブル”が注目を集めている。冬のスキーシーズンを中心に世界中から観光客が集まるため、1個1000円のおにぎり、2000円の天ぷらうどん、さらには1杯3800円のラーメンまで登場。働く側にとっても時給が急騰する活況となり、冬季には札幌などから出稼ぎアルバイトに訪れる人もいる。しかし、その余波で近隣の介護事業所の経営が行き詰まるという思わぬ弊害も出始めている。
「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山を望む、北海道虻田郡倶知安町(あぶたぐんくっちゃんちょう)の訪問介護事業所が昨年12月、ひっそりと廃業した。主な原因は人手不足だ。同町にある介護事業所の関係者はこう嘆く。
「全国チェーンの牛丼屋さんにも、時給で負けちゃうんですよ……」
関係者の話に出た牛丼チェーンの時給を調べると、たしかに高い。公式ホームページによれば、倶知安町店の時給は1500円以上、深夜帯は1900円だ。高校生の時給でも1400円となっている。ちなみに同チェーンの東京・新宿区での時給は深夜帯で1688円。倶知安町での時給は新宿より高水準なのだ。前出の介護事業所関係者が続ける。
「我々の業界はギリギリまで頑張っても時給1500円くらいまでしか出せない。とても勝てません」
料金を上げられない介護保険制度の制約
倶知安町やニセコ町の一部を含む地域は、古くからひらふ地区と呼ばれ、土地の人たちはニセコ町のことを「山」と表現する。
「昔はね、“山”に行っても稼げなかったけど、今はほら、ご存じの通りパウダースノーを求めて、世界中から人が集まっているし、2030年には札幌と倶知安を25分で結ぶ新幹線の開通も予定されています。そのため地価もここ数年で3倍くらいになった。時給や家賃も高止まりで、バブルみたいになっているんです」(前出の介護事業所関係者)