実際、倶知安町の社会福祉協議会ヘルパーステーション管理者である前出・斎藤氏は現状についてこう説明する。
「当協議会の場合、訪問介護部門の2022年度の売り上げはマイナス31.96%です。地域全体の賃金が上がっていることもあり、職員の待遇改善のために退職金用の積み立てを始めたことが大幅マイナスの原因ですが、前年度もマイナス4.8%でした。このように、訪問介護事業の運営は正直厳しい。過去の蓄えを切り崩したり、他部門の職員を兼務させるなどの工夫を重ねて、なんとかやっている状態です」
厚労省の示した方針通り、訪問介護事業の基本報酬が下がれば、人手不足はさらに加速するだろう。
「訪問介護事業所がやっていけなくなったら、利用者は自宅で介護サービスを受けられなくなります。そうなったら、家族に頼るしかなくなる。現役世代の介護負担が増え、生活のための仕事にも悪影響が出てくる。ますます地域が疲弊していくことになると心配しています」(同前)
ニセコで顕著なだけで、人手不足での賃金上昇は全国的な動きだ。そうしたなかで、訪問介護に対する基本報酬の切り下げが適切なのか。改めて国の判断が問われることになりそうだ。