日本を代表するスポーティなツーリングワゴン「レヴォーグ」をベースに、最低地上高を55mmから200mmへと拡大し、SUVテイストをトッピングしたのが「レヴォーグ・レイバック(以下、レイバック)」。昨年、デビューを果たすと本格的なオフロードにも対応できる走破性の良さと、スポーティで軽快な走りによって支持率を上げている。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。レイバックのフィールドでの対応力を自動車ライターの佐藤篤司氏がレポートする。
よくできたベースがあって可能となったクロスオーバーSUV
スバルはこれまでも「レガシィ」の車高を上げて「アウトバック」を、そしてコンパクトハッチ「インプレッサ」の車高を上げて「クロストレック」といった具合でSUVモデルを発表してきました。すでにお家芸とも言えるほど完成度の高いモデルを提供しています。そして今度はスポーティなワゴン、レヴォーグの車高をアップして「レイバック」をリリースしました。見た目だけで言えば「車高を上げただけ」かもしれませんが、事はそれほど簡単ではないのです。
例えば車高が55mmもアップすると、クルマの重心高も変わり、同時にカーブなどでボディがロール(左右に傾く)時の回転軸である「ロールセンター」も変化します。これだけでも乗り心地やクルマの運動性能、つまり走りの総合的な味わいは大きく変わってしまうわけです。その上で魅力的な走りになるように新たに味つけを変え、ワゴンとSUVのクロスオーバーとして優れたSUVに仕上げるという、実に難しい作業が必要になるのです。
当然ながら車高を上げ、SUV化するにはボディ剛性の高い、優れたベースモデルが必要になります。せっかく重心を上げてSUVにふさわしい性能を与えようとしても、ボディがヤワでは、それこそ車高を上げただけと言うことになるのです。
その点、レイバックのベースとなったレヴォーグは「素性」がよく、十分にその要件を揃えていました。レヴォーグの剛性の高いボディは、路面からの衝撃をしっかりと受け止め、軽快でスポーティな走りも余裕でこなすツーリングワゴンに仕上がっています。その優れたベースがあったればこそ、車高を上げてSUVテイストを向上させ、クロスオーバーSUVを完成させることができたと思います。
実は昨年のデビュー直前に行われた一般路(クローズされたコース)での試乗によって、実力の高さは十分に理解できていました。レヴォーグが持っているスポーツカーのような「切れのいい走り」は、少し影を潜めるのですが、その一方で、コーナリングでのしなやかなロール感や路面のうねりに対するボディの動きはソフト感が増し、自然で快適な乗り心地になっていたのです。
その味は、スポーティとコンフォートの「絶妙なる融合」を果たしたと言えるほど美味しい感触です。あくまでも個人的な好みですが、レヴォーグより、レイバックの走りの味の方がスキーやキャンプといったアウトドアライフ好きにとってみれば、相当に魅力的な存在に映りました。