日本のEVベンチャー「ASF」が、大手運送会社の佐川急便と共同開発した軽貨物車「ASF2.0」。中国企業が製造を担当し、日本には輸入車として上陸してくることになる。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は「ASF2.0」の使い勝手や、自家用車としての可能性を自動車ライターの佐藤篤司氏がレポートする。
日本企画、中国製造の「輸入軽バン」
市街地を縦横無尽に走り回る必要のある宅配作業。利便性や燃料消費のことを考えれば、積載性がよい上に小回りのきく配送用の軽バンは重宝する存在です。一方で、いくら燃料消費で有利という軽バンであっても環境問題は深刻で、解決すべき事案として運送業界でも対策を考えてきました。そして大手の佐川急便とEVベンチャーのASFとが共同で、軽自動車規格に入るBEVで配送用のキャブバン(商用車)を開発することが2020年6月に発表されました。
その計画の開発目標として掲げられた条件は、日々の仕事に対応するため「一充電での走行距離が200km以上」で「満充電までの時間は6kW(普通充電)で6~7時間」など。結果として軽自動車クラスとしては大容量の30kWhバッテリーを搭載し、一充電辺りの航続距離はWLTCモードで243kmを実現しました。日産サクラ/三菱ekクロスEVのバッテリー容量が20kWhで航続距離はWLTCモードで最大180kmですから、都市部での貨物配送として考えると、ゆとりのあるスペックです。
日産サクラを初めて走らせたとき「シティコミューターとしての可能性」を感じました。走行中にCO2を排出しないことを始め、エンジン車が苦手とするストップ&ゴーの多い都会でこそBEVの軽バンが重宝されることは明確です。さらに宅配などの配送業務においては、エンジン車の弱点だった騒音についても心配はなく、朝や夜間の時間帯でも気兼ねなく業務がこなせます。都市部こそBEVの特性は輝くというわけです。
そして走行面での実用性を実現した上で、日本の安全基準にも適合させることを考えました。ドライバーと歩行者の安全を守るために衝突被害軽減ブレーキや誤発進防止機能、車線逸脱警報機能、前方車両発進通知機能、坂道発進サポート機能といった先進の安全装備も与えたのです。もちろん基本部分を一から開発し、十分な安全性を確保した上で、将来的な自動運転までも視野に入れた最新BEVとして考えられているのです。