懇切丁寧に対応する余裕がない
現在「かどや」では、「Japanese language only(日本語対応のみ)」の張り紙を店頭に掲出し、対応しているという。
「誤解されると困るのですが、うちの店は『外国人一律拒否』ではありません。日本語で意思疎通ができる外国人の方もたくさん来ます。ただ、うちは注文を紙に書いてもらうシステムなので、言葉や文字がまったくわからない人がオーダーするのは困難。だから『日本語対応のみ』の張り紙をしました。『Japanese only』だと差別になってしまうし、それは不本意。無用なトラブルを避けるための苦肉の策なんです」
そう話す黒かどやさんだが、英語がまったく話せないわけではない。
「留学や料理人の仕事で、計3年ほど欧州で生活していました。英語である程度のコミュニケーションは可能ですが、咄嗟に『ニラ玉炒め』や『フグのにこごり』がどんな料理か? と言われても説明するのは難しい。翻訳アプリを使っても限界があるし、そもそも言葉がわからないお客に、懇切丁寧に対応している余裕がないんです」
2004年の開店後、しばらくは言葉のわからない外国人客も受け入れてきたというが……。
「対応をやめた理由の一つは、総じて客単価が低かったからです。うちの店に限っては、外国人客の単価は日本人客の半分から3割程度。しかも長居されることが多かった。店がある向島は下町で格安の民泊も多数あり、『なるべく飲食にもお金をかけたくない』層が多かったのかもしれません。でも、そのようにコミュニケーションも取れず、お金を使ってくれない人を受け入れると商売が成り立たなくなってしまうんですよ」