こうした海外の例も参考にしながら、「観光省」が日本全国の「何もない田舎」の隠れたポテンシャルを在外公館から世界に発信するのだ。最近はオーバーツーリズムが問題になっているが、国によって好む観光地は異なっているから、国別の訴求ポイントを把握して現地でキャンペーンを繰り広げれば、訪問先を分散することもできるだろう。
とにかく日本は歴史と伝統がある。神社・仏閣・庭園などの文化財、美しい自然と温泉、おいしい食事、便利な交通システム、そして何よりも安全・安心という外国人旅行者にとってかけがえのない大きな魅力を持っている。それらを最大限に利用してGDPを10%拡大する、というのは人口減少に見舞われている日本の貴重な国家戦略だ。
岸田政権は「新しい資本主義」の柱の1つとして「デジタル田園都市国家構想」を掲げている。デジタル技術を活用して地方活性化を加速するというものだが、そういう国の補助金によるお仕着せの施策より、地方がそれぞれ具体的な観光振興の手立てを構想し、在外公館と共同でインバウンドを呼び込む。これが、日本経済再興の手っ取り早い方策であり、真の地方創生にもつながると思うのだ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年5月17・24日号