3歳下の弟に中学受験をさせるのか訊いたところ…
ふと、A子さんの娘には3歳下の弟がいることを思い出し、「今年、小学4年だとおっしゃっていましたが、中学受験はさせるんですか」と訊くと、もう塾に通っているという。
どこの塾かと訊くと、「SAPIX」と私から視線を外し気味につぶやいた。それから言い訳をするように続けた。
「息子は公文で3学年先まで進んでいるんです。算数が得意そうなので中学受験には向いていると思うんですよ」
また夢を見たいのであろう。A子さんは日々の通勤や仕事に加えて、家事や子育ての負担もある。女性が出産後も働きつづけるのは当然の時代になったが、それは非常につらく厳しい道である。
そういった生活を続けていくためには、夢が必要なのである。その夢がA子さんの場合は子どもの中学受験なのであろう。
仮に夢がかなわなくても、大人になってから夢を見るチャンスはそうはないのだから、逃してはいけないものなのかもしれない。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。