2024年の中学受験者数は前年よりやや減少したものの、受験率は過去最高を記録した。中学受験の盛り上がりを支えているのが、SAPIXなど大手塾の存在だ。子どもをSAPIXに通わせる親の思いとはどのようなものか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【SAPIXと夢・全3回の第1回】
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X(旧Twitter)で以下のような投稿が目についた。
〈今の日本において、『夢を見させる商売』が一番儲かる。結婚相談所、SAPIX、ワンルーム投資、ディズニーランド、ジャニーズ、新興宗教、美容……など。原価とか気にしないでしょ?!〉(mojaさん、2024年2月12日投稿)
これを読んでなるほどと思った。
中学受験を取材してきてずっと疑問に思ってきたのは、「なぜ共働き家庭がSAPIXを選択するのか」ということだった。その答えがこの投稿には書かれている。
現在、中学受験の主流は共働き家庭で、大手塾も共働き家庭をターゲットにしており、自習室完備でいつでも質問ができ、塾の中で学習が完結するようになっている。塾で学習の7割をやって、3割が宿題、つまり自宅での勉強となる。親はこれをやるように見張っていればいい。
一方、SAPIXでは塾での学習が3割で、自宅での学習が7割といわれる。単純に宿題の量が多いというわけではない。他塾は授業中に生徒が自力で問題を解けるところまで仕上げるから生徒は帰宅後、ひとりで宿題できる。一方でSAPIXは授業では導入(とっかかり)しかやらず、子どもは宿題をひとりでやれない場合は、親が教えたり、コーチングをしたりする必要が出てくるケースが多い。自習室もなく、質問も授業のあとにしかできない。そのため、SAPIXは「親が大変だ」といわれる。
これは周知されていることなのに、なぜ、仕事が忙しい共働き家庭がSAPIXを選ぶのか。冒頭のXの投稿が指摘するように「夢があるから」なのだろう。