高性能GPUの中国への輸出が事実上禁止されたことへの対応
スマホ、あるいはスマートシティがらみの防犯用途向けに画像認識、画像解析システムだけを販売しているようでは、市場規模は限られるが、2023年12月期の業績をみると、生成AIによる売上高は11億8370万元(249億円)に達しており、前年と比べ199.9%増加、売上構成比では10.4%から34.8%へと急上昇している。また、自動運転などスマート自動車向けは3億8370万元(81億円)で31.1%増加しており、売上構成比は7.7%から11.3%へと上昇している。スマートシティがらみの売上高が政策の影響で大きく減少し、全体では減収となる中で、今後収益の柱になるだろう部門は着実に拡大している。
気がかりなのは2023年10月、米国政府の規制によってNVIDIA(エヌビディア)のRTX4090、A100、H100など性能の高いGPUの中国への輸出が事実上、禁止されたことだ。ただ、この問題について、同社は上海AI研究所と共同でDeepLink並列計算システムを開発しており、華為(ファーウェイ)、Cambricon、Biren、Muxiなど20以上の国産チップに適応できるようになっている。
この業界において、真の勝ち組はほんの数社に絞られるとみられる。その数少ない勝ち組に入るためには、保護主義にうまく対処し、強国の有力IT企業に加え、バイドゥ、テンセント、アリババ、科大訊飛(アイフライテック)といった国内の有力IT企業との熾烈な開発競争に勝ち抜かなければならない。
日本企業が巨大市場で主導権を握れる可能性は限りなく小さくなっている。大きな野心を持たず、リスクを怖がり、生き残ることばかりを考えているようでは、世界の最前線から遠ざかるばかりだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。