「副業をするんです。アンケートを取ったら、約2割のドライバーがすでに副業を始めていて、6割が今後、副業を考えているという回答でした。
どんな副業をしているのかというと、運転代行業や倉庫の仕分けなど夜間の仕事が多い。ウーバー・イーツなどの配達員をしている人もいました。運転代行や仕分けの仕事をして、家に帰らず運送会社の仮眠室で数時間寝て、トラックのハンドルを握るという生活になっている人もいる。“少しでも寝なきゃ”と焦るとかえって寝られなくなり、お酒を飲むことが習慣化し、依存症になるドライバーもいるのが実情です」
減った収入を副業で補うしかなくなり、結局、長時間労働は改善されないどころか、むしろ悪化しかねない状況という。
ドライバーの健康を蝕む「荷待ち問題」
トラックドライバーが長時間労働であるのは事実で、年間総労働時間は全産業平均の2112時間に対して、中小型トラックドライバーは2484時間、大型トラックドライバーは2544時間と約2割長い(令和3年「賃金構造基本統計調査」)。過労死も多く、厚労省によると、令和4年度の労災認定(脳・心臓疾患)の請求件数は「道路貨物運送業」が133件でトップだった。これを見過ごすわけにもいかない。
「私は時短に反対しているのではなく、収入を減らさずに労働時間を減らすべきだと考えています。それを実現するには、1つは運賃を値上げしてドライバーの給与を上げること。もう1つは待機時間を減らすことです。
長時間労働といっても、ずっと運転しているわけではなく、拘束時間が長いのです。荷物を納入するためにトラックが行列して待つ荷待ち時間があって、渋滞と同じで、前のトラックが進んだら間を詰めなければならないから、寝て待つわけにいかない。路上に停めてトラックから離れると、違法駐車で罰せられるので、トイレにも行けない。排ガスが出るからエンジンを止めろと言われて、炎天下のなかでもエアコンをかけられない。
平均の荷待ち時間は1.5時間とされていますが、私が取材したなかでは、運転と荷待ちを合わせた拘束時間が21時間半という例もありました。こういう労働環境こそがドライバーの命を縮めている。これは荷主側の問題です。そこで必要になるのが『待機所』。トラックの待機場所を作れば、トイレにも行けるし、体を休めることもできるのです」