企業が「増配」していればいいわけではない
企業による増配が配当金を増やす成長エンジンであるならば、「増配している企業を選べば、配当金の増加が見込める」と考えるかもしれませんが、必ずしもそれが正解とはいえません。
日用品や化粧品の大手メーカー・花王(4452)のように、記録的な連続増配をしていても、あまり増配の恩恵を得られないケースがあるからです。花王は1991年3月期以降、連続増配を継続しており、2024年12月期の配当予想「152円」が実施されれば、35期連続の増配を達成することになります。
これは自ら更新してきた連続記録を塗り替えて、日本の「連続配当ランキング」の第1位になるなど、花王は「増配企業」の代表格です。
・配当金 「70円」(2014年12月期)→「152円」(2024年12月期)
・増配率 2.17倍
・配当利回り 2.63%
株式投資の世界では、25年を超えて連続増配している銘柄を「配当貴族」と呼びますが、花王の過去10年の配当金を見ると、配当貴族というインパクトと比べて、その内容は物足りないように思います。
先に紹介した注目4業種と比較すると、増配率2.17倍(予想)、配当利回り2.63%は見劣りします。連続して増配はしているものの、増配の恩恵はそれほど多くはないため、「花王の株を買うならば、魅力的な銘柄は他にもある」と考えても不思議ではありません。
企業が増配する場合、業績が堅調で、企業の「稼ぐチカラ」(収益力・成長性)を示す1株益が上昇していることが大切ですが、花王の場合は、2019年から1株益が減少しているにも関わらず、それと反比例して増配を続けている状態です。
連続増配の背景には、増配によって株主を増やし、株価を維持しておかないと、M&A (企業の合併・買収)の際に不利になるという考えもあるのでしょうが、増配を続けることによって、配当性向(当期純利益に占める年間配当金の割合)が徐々に高まっており、「企業の成長のための新しい投資をせず、増配の連続記録が目的化しているのではないか?」という見方まで出ています。
いくら増配が続いても、そこに業績や1株益の上昇が伴わないと、取得利回りが上がらず、増配の恩恵には結びつかないこともあるのです。
「取得利回り」を上げるための2つのアプローチ
配当金ダルマを大きく育てるためには、取得利回りを上げることが大切ですが、そのためのアプローチには2つの方法があります。
一つは、これまでお伝えしてきたように、安定感のある企業の株を買って持ち続けることによって増配の恩恵を受けること。
もう一つは、業績が堅調で株主還元も積極的な企業の株を、世界経済の影響などの外的要因によって下がったときに買うことです。こうしたケースでは、配当利回りが跳ね上がる可能性が高いため、十分に増配の恩恵を受けることができます。
取得利回りが上がるのは、「増配の恩恵を受け続ける」か、「株式市場の需給の関係で株価が下がったときに買う」のどちらかですから、配当金ダルマを大きく育てるためには、淡々と株を買い進めることによって、この2つを上手に取り込んでいくことが大切です。
長期的に株を買い続けていくと、株価が大きく下がるような局面に遭遇することになりますから、そのときは一段ギアを上げて買うことを意識していれば、配当利回りの恩恵を即座に受けることができます。