深刻な社会問題となっている「空き家」の増加だが、今後さらにこの動きを加速させる要因の1つと考えられているのが、「1人暮らしの高齢者世帯」の増加だ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によれば、2050年に1000万戸を超え、1人暮らし世帯全体の5割近くに及ぶという。そんな現実に対して有効な対策はあるのか? ベストセラー『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編を読む】
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社人研の推計によれば、1人暮らしの男性高齢者に占める未婚者の割合は2020年には33.7%だったが、2050年には59.7%に急増する。女性は11.9%から30.2%に拡大すると予測している。
相続する親族がいない1人暮らしの高齢者の増加は、空き家の拡大を加速させそうである。
親族がいたとしても、独立した子どもなどが相続後に亡くなった1人暮らしの高齢者宅に住むとは限らない。子どもが住宅取得を考える年齢の頃に親が亡くなるのであれば、リフォームして実家に住もうという選択をする人も多くなるだろうが、いまや「人生100年」と言われる時代となり、子どもが定年退職する年齢に達しても親は健在というケースが増えているからだ。
それは、親が亡くなるまでに、独立した子どもは子どもで自ら家庭を築き、自分の家族と住む住宅を取得して暮らしているということだ。
実家がよほどロケーションに恵まれた場所にあるというならば別かもしれないが、多くの人は親が亡くなったからといって実家に移り住むという話にはならない。自宅が2軒あっても持て余すことになる。
親族が少なくなった現代においては、相続を重ねて2軒どころか3軒以上の住宅を所有することになる人もいる。不便な地方の住宅を相続した場合、売ったり貸したりすることが難しく、すべてが放置空き家に転じていくことが珍しくないのだ。
「活用しないのはもったいない」との声も小さくないが、拡大し続ける空き家をどうすればよいのだろうか。