新緑の季節、汗ばむ陽気が続く中、日本経済には寒風が吹いている。5月の食品値上げは417品目。平均値上げ率は調査開始以来最高の31%を記録する一方、実質賃金は過去最長の24か月マイナスを叩き出した。
そんな“冬の時代”を生き抜くために、いかに資産を築くべきかは万人に共通する最重要事項といえる。
とりわけ「人生100年時代」の後半戦を生きるために“先立つもの”の確保は必須。投資を始めるシニア世代も増えている。なかでも今年1月にスタートした「新NISA」には投資で増えた利益が「非課税」になるなど多くのメリットがあり、60代以上の新規口座開設者が増加しているという。埼玉県の主婦・Aさん(60才)もそのひとり。
「同い年の夫の定年を機に、夫婦で資産を築くため、ふたりで新NISAの口座を開設しました。夫は退職金の一部を、私は定期預金の一部をそれぞれ取り崩して運用し始め、いまのところ少しずつですが順調に増えていっています。
それを見た夫が“もっと元手があれば利益も増えるはずだから”と年金を前倒しでもらって投資に回そうと言い始めたのですが、なんだか不安で。うまくいけば、資産を大きく増やせることもわかっているのですが……。確実で安心な方法はないものか、悩み続けています」
“繰り上げして投資”は失敗のリスクが大きい
ファイナンシャルプランナーの鬼塚祐一さんは、限られた元手でより多くの資産を築くため、受給した年金を新NISAで運用しようとするAさんのようなシニア世代が増えていると話す。
「50代の半ばを過ぎて年金を受給できる年齢が近づくと『繰り上げて投資に充てるべきか』『年金はぎりぎりまで取っておき、定年後も仕事を続けてその収入を使うべきか』など、迷い始める人は少なくない。
経済状況の悪化や、少子高齢化への不安から“年金制度に頼るよりも自分で増やした方が安心”という考えに至るのでしょう」