宅配便や猫にかこつけて「強制離脱」
当然、その場から離脱を試みる人もいる。商社勤務の30代女性・Bさんは、まず「テレワークだからこそ、電話が変なタイミングになる」ことを指摘する。
「基本的に、電話をするのは職場の人しかいません。友人は全部SNSでのやり取りなので。そういう前提があったうえで、やっぱりテレワーク中だと互いの姿が見えないので、私がトイレに行っているとか、トイレに行く途中だなといったことが見えないわけですよね。だから、電話も変なタイミングでかかってくることはよくあります」
そうした電話中、Bさんは、トイレに行きたくなったら「“強制離脱”する言い訳」でやり過ごしてきたという。
「『宅配便が来たのですみません』とか、『ごめん、電池切れそうです。また電話……』『ちょっといま電波が不安定』などという言い訳を駆使して強制離脱します。この間は『あっ、○○ちゃん、何やってるの? わー!』とさも飼い猫がいたずらをしているかのように振る舞い、『様子を見てきます』と言ってトイレにダッシュ。本当は猫なんて飼ってないですけどね……。
隠語じゃないですが、“お花を摘みに行く”みたいな便利な言葉がほしいです。なぜ、『トイレに行きたい』と言えないのか自分でも不思議です。小学生が授業中トイレに行きたいとなかなか言い出せない緊張感が、大人にもあるのでしょうか」(Bさん)
トイレ中にでも絶対に電話に出る
IT企業勤務30代男性のCさんは、「テレワーク中は、トイレ中でも電話に出る」という。
「テレワーク中、電話だと連絡のタイミングがすれ違うのは“あるある”です。上司が完全に電話中心スタイルの人なのですが、上司に連絡しても出ないし、かかってきたらきたで、僕がスマホをリビングに置きっぱなしだったり、トイレ中だった……みたいなことが多々ありました。しかもスマホって、ガラケーと違って着電があっても別にランプが点滅するわけじゃないので、電話があったことにしばらく気が付かないこともあるんですよね。
そういう折り返しが面倒くさくなり、少なくとも電話がかかってきた時には絶対出るようにしたいと考えた結果、トイレ中でもストレスなく電話に出られるように、トイレにスマホスタンドを設置しました。ちょうどトイレットペーパーホルダーの上に、いい感じに棚があるんです」
とはいえ、「折り返すことには変わらない」というCさん。
「『一瞬待っててください』といって、数分以内に折り返します。一旦出るのがポイントなんです。そうすれば、相手もまだ電話の前で待機してくれるので」(Cさん)
三者三様の乗り切り方があるが、「トイレに行きたい」とはなかなか言いづらい現実のなかで、これからも悪戦苦闘は続きそうだ。(了)