人身事故は前年の2倍、警察の取り締まりが追いつかない
不思議なのは、違法で危ないモペッドを警察が積極的に取り締まりをしているようには見えないことだ。道路にはお年寄りや子供もいるのに、なぜ一般市民に恐怖心を与えるモペッドが野放しになっているのか。疋田さんは、2つの理由が考えられると言う。
「違法なモペッドと、合法でナンバープレートや運転免許などの義務がない電動アシスト自転車はともにペダルがついていて、見た目で区別がつきにくい。坂道をペダルなしでスイスイ上っていたらフル電動だとわかりますが、怪しいからと任意で調べてみた結果、合法タイプだったら、警察官は『誠に申し訳ありません』と平謝りするしかありません。しかも中にはスロットルは付いていないものの、電動アシスト自転車の基準を超えるハイパワーで走る“脱法タイプ”もあって紛らわしいから、警察はなるべく手をつけたくないんです。
さらには交通警察官の人員の問題があります。端的に人手が足りず、急増する危険なモペッドに取り締まりが追いついていません」
警察庁によると、2023年に全国の警察が摘発したモペッドの交通違反は345件で、前年の96件から約3.6倍増加した。内訳は、無免許運転111件、ウインカーやミラーなどの保安装備がない装備不良102件、歩道走行などの通行区分違反43件が上位3位で、人身事故も前年の2倍を超えた。
「交通違反や人身事故が急増しているのは、モペッドが原付バイクであるという周知が進んでいないからでしょう。特にネット販売は野放し状態で、モペッドが“オシャレ自転車”として売られています。モペッドを乗り回している若者の多くも、ちょっと便利な電動自転車のつもりで乗っているのだと思われます」(疋田さん)
確かにネットの通販サイトを見ると、オラオラ系のモペッドが「ファットバイク自転車」「フル電動自転車」などと紹介され、《そのひと漕ぎに、魔法を》《暮らしを、スイスイ》といった胸が躍るキャッチコピーがそえられている。
細かな商品説明欄には「公道に使用する場合、ナンバー登録と日本国内有効免許必須」「自賠責保険又は共済の契約が必要」などと記されているが、注意しないと読み飛ばすレベルで、モペッドを「アシスト自転車」のカテゴリーに含むサイトもある。