モペッドの販売業者は「基本的に客任せです」
実際にネット販売店はどれほどの説明をしているのか。5〜6種類のモペッドをネット販売する北関東の販売店員は「基本的に客任せです」と語る。
「商品と一緒に免許やナンバー登録が必要と説明する資料を同封して送りますが、購入者がナンバープレートを登録したかまでは把握していません。事故が怖いので保険には必ず加入してくださいとも注意書きしていますが、結局のところはお客さんに任せています」
都内のネット販売店員も、「手を尽くしているが、限界がある」と本音を漏らす。
「モペッドを注文いただいたお客さんには必要事項を記した確認メールを送り、ナンバーなどの条件を了承してもらってから商品を発送します。メールを読んだお客さんが『運転免許が必要ならやっぱり買えません』と注文をキャンセルすることもあるし、メールに返信がないお客さんには、こちらから電話して案内します。二重の対応をしていますが、実際にお客さんがルールを守っているかまでは確認できません」
販売時に年齢や運転免許所有の確認はしているのだろうか。九州地方のネット販売店員は「正直、それは難しい」と語る。
「ネット通販では年齢や運転免許の確認は難しい。写真を撮って送ってもらうことも、個人情報の問題があるから現実的ではない。こちらとしては、お客さんを信じるしかない」
販売店も努力しているが、違法状態を食い止めるにはいたらない。さらに抜け道となっているのがフリマサイトだ。前出の都内のネット販売店員が語る。
「モペッドの多くはフリマサイトでも取引されているようです。実際にウチでモペッドを購入した人がフリマサイトで売りに出し、それを購入した人が事故を起こしたこともありました。その事故を起こした人は、『モペッドは自転車だと思っていた』と語ったそうです。
購入の際にルールを説明すると、『でも、バレなきゃいいんでしょ』と言うお客さんもいます。もちろん、そういう方には販売しませんが、買う側の意識も大切だと思います」
警察の対応力と乗り手のモラルが問われる中、知っておきたいのは、一生を台無しにしかねないモペッドの巨大すぎるリスクだ。違法モペッドに乗って事故を起こした場合、“地獄の賠償ロード”が待っているのだ。
(第2回〈違法モペッド事故の先にある“地獄の賠償ロード” 自転車保険は適用されず「自己破産で免責されないケースも」〉に続く)
取材・文/池田道大(フリーライター)