2月に成長投資枠で、世界の環境関連企業を対象とする投資信託に83万円を投じたB氏(45)もそのひとりだ。
「環境問題は長期的に有望なテーマとよく聞くので、多少の値動きがあっても長期の保有を考えていました。しかし、4月の株価急落を受けて『このままだと大やけどする』との思いが強くなり売却。13万円ほどの損失を出しました。ところがその後、この投信が再び値上がりし始めた。つくづく早まったことをしたと後悔しています」
損切りには至っていないが、半導体関連銘柄を購入したC氏(65)も不安な日々を過ごしている。
「ある半導体商社の株を2月に株価7000円で100株、70万円分購入しました。株価は一時7900円まで上がりましたが、5月には5000円を割り込み、現在約22万円の含み損を抱えています。新NISAの成長投資枠だから長期保有して株価の回復を待ちますが、正直、心配ばかり。
厚生労働省が金融所得に応じて社会保険料の負担を増やす検討を始めたとの報道もあり、投資の旗振りをした国に騙されたのではないかと、疑心暗鬼になっています」
投資初心者が陥りがちなパターンから逃れるには
マーケットバンク代表の岡山憲史氏は「これらのケースはいずれも投資初心者が陥りがちなパターン」と指摘する。
「そもそも新NISAは『長期の資産形成』を目的としています。株価が急落したからと、焦って損切りすれば損失が確定してしまう。長期保有すれば、いずれ株価が回復して収益につながる可能性もあるので、一時的な株価下落に怯まず、長期投資を継続するのが賢明です」
だからこそ長期的な上昇が見込め、リスクを最小限に抑えられる投資先を見極めることが大切となる。岡山氏が続ける。
「現在、新NISAの投資先として、全世界の株式に分散投資する通称『オルカン』[eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)]や、米国の有力500社の株価指数『S&P500』に連動するファンドが人気を集め、これを推奨する向きもありますが、オルカンも6割以上は米国株で構成され、運用先が大きく偏っていることに注意が必要です。
この先、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマンショックのような金融危機が起こり米国株が暴落すれば、思わぬ損失を被るリスクもある。投資の経験や知識が浅い人はメディアやネットの情報を鵜呑みにせず、長期・分散・積立を第一に考えた投資を心がけてほしい」
ブームや情報に踊らされることなく、新NISAを有効活用したい。
※週刊ポスト2024年6月7・14日号