大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

能登復興には市町合併も見据えてインフラの「集約化」を 大前研一氏が考える早期復旧案

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

 さらに、より長期的な展望として、富山県との合併を打ち出す。石川県と富山県はもともと加賀藩(※加賀藩に隣接した一部が支藩の富山藩だった)で、廃藩置県で明治9年(1876年)から明治14年まで、石川県は現在の県域に加え富山県と福井県の嶺北地方にあたる地域を含んでいた。その後、明治16年に分県し、現在の富山県ができた。

 だが、能登半島をぐるりとバイクで走ってみると、石川県と能登半島の付け根の富山県氷見市以南を地理的に分ける理由が見つからない。また、両県に電力を供給しているのは富山市に本店を置く北陸電力だ。

 ならば、県名をどうするかはさておき、まず石川県と富山県が合併したら……と考える。それぞれの県民性もあるので、実現は難しいだろうが、かつて日本で最も豊かだった加賀100万石に戻る、と考えれば納得する県民も多いだろう。能登半島地震の記憶が鮮明なうちに、このような構想を前面に打ち出してみることが重要だ。

 両県に福井県も加われば、以前から私が提唱している道州制の「北陸道」になる。北陸電力は福井県に3つの原子力発電所を保有している関西電力に吸収してもらい、難題である志賀原発の廃炉も含めて任せればよい。

 地方は、国に頼っていたら一緒に沈むだけである。

 となれば、知事の役目は何か? 地元住民の安全・安心を確保するのは当然だが、それに加え「都道府県の利益を最大化して住民を豊かにする」ことが極めて重要だ。つまり、知事には組織運営体系として戦略を立てる単位を明確にして「経営者の視点」を持ち込むことが必要不可欠なのであり、地方独自の発想で“繁栄の方程式”をひねり出さねばならないのだ。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2024年6月7・14日号

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