そもそもアクティビストとは?
アクティビストは、別名「物言う株主」とも呼ばれます。その名前のとおり、株主としての権利を積極的に行使して、企業に影響力を及ぼす投資家のことを指します。
アクティビストの活動は、1980年代にアメリカで始まったと言われていますが、日本で取り沙汰されるようになったのは、2000年代になってからです。元通産省の官僚だった村上世彰氏が立ち上げた投資ファンド(通称:村上ファンド)が、企業価値の低い企業や経営効率の悪い企業に対して、大胆な株主提案を突き付けたり、敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたりしたことがきっかけの1つです。ちなみに、三井松島ホールディングスを買い付けているシティインデックスイレブンスは、旧村上ファンド系のアクティビストです。
強引に感じる企業への関与が、企業や経済界から嫌がられ、いっときは下火になっていたアクティビストの活動ですが、最近は、東証が企業価値向上の経営を口すっぱく提言することもあり、ふたたび存在感を強めています。
アクティビストが企業に対して求めるもの
アクティビストは、企業価値を向上させ、株価を上げることが目的なので、そのための提言を企業サイドに行います。具体的には、
・キャッシュが潤沢な企業に対して増配や自社株買いなど株主還元の強化を求める
・経営者の交代や社外取締役の選任を求める
・役員報酬の引き下げを求める
・非効率な事業の売却や遊休資産の売却を求める
などです。
なんとなく企業にとっては煙たい存在のような印象がありますが、最近は、経営陣との対話を重視する穏健なアクティビストが増えており、企業にとってもありがたい存在になりつつあります。
わたしたち投資家にとっても、アクティビストの提言によって企業価値が向上すれば、株価も上昇しやすくなります。そのためあえて、アクティビストの標的になりそうな企業を物色する投資家もいます。
アクティビストが狙う企業の特徴
日本で活動するアクティビストの数は年々増加しており、2024年5月10日時点では72社で、2014年の8社から9倍に増えています。
アクティビストが狙う企業の特徴としては、
・PBR(株価純資産倍率)1倍割れなど資本効率の改善余地が大きい
・株価が割安で、キャッシュリッチである
・経営陣の質が低い
・コーポレートガバナンスに問題がある
などが挙げられます。アクティビストが参入する前にキャッチするのはなかなかハードルが高いですが、大量報告書などで保有が明らかになってからの後追い投資でも恩恵は受けられそうです。
投資の切り口として参考にしてください。
今回のまとめ
・アクティビストが保有する企業の株価は上昇傾向にある
・アクティビストが保有比率を高めたら投資のチャンス
【プロフィール】
藤川里絵(ふじかわ・りえ)/個人投資家・株式投資講師・CFPファイナンシャルプランナー。2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため活動し、DMMオンラインサロン「藤川里絵の楽しい投資生活」を主宰。本稿の関連動画がYouTubeにて公開中。