「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄首相の重要政策であり、現在も参議院で審議が続く「子ども・子育て支援法」改正案。その最大の焦点が、2026年度から公的医療保険の保険料に上乗せする形で徴収される「子ども・子育て支援金」についてだ。集められた支援金は少子化対策として児童手当の拡充など様々な施策に充てられることになるが、「社会保険の目的外使用だ」「受益と負担の対応関係がない」などと批判する声が根強い。同法案の衆院通過前の4月上旬には有識者29人による〈「子育て支援金」制度の撤回を求める〉緊急声明も発せられた。
岸田首相らは医療保険への上乗せ分について、国会答弁などで、賃金増や歳出改革などで「実質負担ゼロになる」などと説明しているが、ネットの声などを見る限り、その説明に納得している国民は少ないようだ。
4月にこども家庭庁が国会に提出した年収別の負担額の試算によると、総額1兆円の支援金を集める2028年度時点では、会社員や公務員(被用者保険)の場合、年収200万円で月額350円、同400万円で650円、同600万円で1000円、同800万円で1350円、同1000万円で1650円になるという(いずれも労使折半後の金額)。抜本的な少子化対策には全世代による理解や支えが不可欠であるとはいえ、毎月の給与から「天引き」される額が増える現役世代の本音はどうなのか。フリーライターの吉田みく氏が、小学生の子どもを育てる40代のパート主婦と40代の未婚男性ら、年収600万円前後の人たちに話を聞いた。
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公的医療保険料に少子化対策の財源となる「支援金」を上乗せして徴収する案を巡り、様々な意見が飛び交っている。加入する保険や年収に応じて徴収額は異なるが、会社員や公務員などの被用者保険の場合は年収600万円で月1000円ほどの負担となるようだ。
小学生の子どもを持つ都内在住のパート主婦・マサコさん(仮名、43歳)は、「支援金」の負担についてこう難色を示す。
「少子化対策のために必要なお金なのは分かりますが、月1000円程度だとしても負担が増えるのは厳しいと感じています。たった1000円でと思われるかもしれませんが、この先、子育てにいくらかかるのか想像がつかないうえ、どんな支援が受けられるのかが不明のまま毎月の負担が増えると聞いて、不安が増すばかりです」