米国でも日本でも「自社株買い」が株価を押し上げている
米国株を押し上げる要因は、まだある。
いまや米国株の最大の買い手はほかでもない、「自社株買い」である。ブルームバーグが報じたゴールドマン・サックスのレポートによれば、今年見込まれている自社株買いは9340億ドルにものぼり、その約6分の1がこの5~6月に実施される見通しだという。なかでもアップルは1100億ドルと過去最高の自社株買いに踏み切るほか、グーグルの持ち株会社であるアルファベットは700億ドル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)は500億ドルの自社株買い計画を発表している。GAFAMを中心に昨年を上回る規模の自社株買いが続けば、それが株価を押し上げていくのは想像に難くない(そうした観点から発掘した米国株の有望銘柄については別記事で紹介したい)。
そして、その波は日本株にも波及する。
日本では、安倍政権時代に始まったコーポレートガバナンス(企業統治)改革がようやく実を結びつつあり、自社株買いや増配などの株主還元策を積極的に打ち出す企業が続出。特に、利益が拡大しても内部留保でため込んできたとの指摘もあった日本を代表する大型バリュー(割安)株のなかで大規模な自社株買いが相次いでいる。トヨタ自動車の1兆円規模の自社株買いをはじめ、三菱商事も発行済み株式数の10%にあたる5000億円を上限とする自社株買いを発表するなど“自社株買いラッシュ”ともいえる状況だ。
指数採用銘柄における大型バリュー株が占める比率は、日経平均よりもTOPIX(東証株価指数)の方が高い。4月以降、日経平均株価が伸び悩む一方、TOPIXが堅調に推移しているのは、大型バリュー株の下支えが大きいためだ。
自社株買いが好感される格好で大型バリュー株の株価上昇が見込めるなら、日本株の上昇は年後半も見込めるだろう。大型バリュー株の比率が高いTOPIXは年内に3100ポイント台も視野に入るし、TOPIXにつられて日経平均も少なくとも4万3000円台、場合によっては4万5000円まで上振れしたとしても不思議ではないだろう。
もちろん、リスク要因がゼロというわけではない。この先、米国のインフレ率が再び高まり、FRBが利下げできない状況に陥れば株価下落は避けられない。ただ、現時点ではその可能性は低いとみている。