ハーレー風味を感じつつ、新たな世界観を完成させた
目の前に現れたアメリカン・ロードスタースタイリングのX500は思いの外、堂々としたボディです。以前、走りを楽しんだX350はタンクも細長く、軽快さ、手軽さを感じさせるボディで、実際に走らせても扱いやすく、すべての操作や動きは軽々としていました。
一方、大型バイクならではの押し出し感あるスタイルのX500には、ちょっとだけ、緊張感が高まります。さらにシート高820mmという、少々高めのシート(X350は777mm)に跨がると、タンクの太さも合わさり、車体の大きさを意識することになります。車重は208kg で、195kgのX350よりも13kg重い程度か、と思ったのですが実際には、その重量差以上に大きく、重く感じます。これが大型2輪としての風格なのでしょう。
わずかな不安とともに走り出してみると、すぐに走りの楽しさを全身で味わうことができ、不安は一気に払拭。X350とは違った強烈なトルク感と、扱いやすさと重量感が程よく調和した安定感ある走りを伴いながら市街地から郊外まで駆け抜けることができます。
排気量500cc、水冷の並列2気筒DOHCエンジンは最高出力47psで、最大トルクの46 Nmを6000回転で発生します。実際のフィールは低速から中速までストレスを感じることなく、思いどおりに加速を見せてくれます。このゆとりを感じるフィールこそ、大排気量ならではのもの。同時に並列2気筒エンジンならではのギャロップ感とエンジンサウンドが加わります。
従来から抱いてきたハーレーのフィールとは少し違いますが、かと言って、まったくの別物という気持ちにもなりません。それはタンクサイドで誇らしげに輝くロゴと、この堂々とした切れのいい走行感があるからでしょうか。車体が体に馴染むほどに“どこまでも走り続けていきたくなる”という、ハーレーダビッドソンならではの誘惑に駆られます。そんな心地よさがあれば、多少のストレスは解消します。
例えば少し高めのシート高によって足つき性が悪くなり、信号待ちなどでは立ちごけ(停車中に転倒)防止に努めながらバランスを取ることも、克服するのに時間はあまりかかりません。多分、身長が170センチぐらいまでの人にとっては、慣れるまで少々注意が必要かもしれませんが、早々に慣れます。
こうしてしばらく共に過ごしてみるとX500は言わば“ハーレーダビッドソンと言う出汁のきいた、これまでにない創作料理”といったところだろうと思いました。その美味しい料理のプライスはと言えば83万9800円。国産ライバルと比較しても特別に高価ということもありません。リターンライダーが目指す輸入車や、ハーレーブランドの手始めとして考えれば、妥当な線かもしれません。爽やかに晴れ上がった空の下、シーサイドや高原ルートへと向かって自分をイメージしながら納車を待つ、も悪くないと思います。