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【うちの社長は“競走馬”】純利益1兆円のホンダ・三部敏宏社長が推進する「伝統の破壊」 “大企業病”を脱して挑むEV転換という高いハードルへの挑戦

ホンダがソニーと開発中のEV「アフィーラ」(写真=dpa/時事)

ホンダがソニーと開発中のEV「アフィーラ」(写真=dpa/時事)

 実はこうしたEVへの投資強化についてホンダ社内の一部からは「欧米でのEV販売の伸び悩みなどの状況から見て、エンジンの開発も再強化すべき」と反対の声も出ている。ホンダは二輪車、発電機などの汎用エンジンも含めると年間に1000万台以上を製造する世界最大のエンジンメーカーであり、関連技術者も多い。

 しかし、三部氏はしがらみに囚われず、EVシフトを進める考えだ。2021年の就任時に掲げた、2040年までにグローバルですべてのホンダ車をEVとFCV(燃料電池車)にする目標を変えていない。

 ハードルは高いほど楽しい──というのも三部氏のモットーの一つだ。若い頃、エンジン開発の技術者として、排ガス浄化システムの開発プロジェクトに入った際、大気よりもきれいな排ガスを出すエンジンを作ることに成功。その経験から「エンジニアは高いハードルを越えた時にこそ達成感を得られる」と三部氏は周辺に語っている。ホンダのある幹部はこう話す。

「うちの社長は突っ走る“競走馬”みたいだから、これでも一部の役員が、馬をなだめるように“どーどー”とやっている」

「大企業病」に陥っていた

 三部氏が攻めの経営を強化できる大きな要因は、前述の通り、収益力が劇的に回復したことにある。

 5月の決算会見では来期も増益で、営業利益率は7%となる見通しを明かした。ホンダは2026年3月期に営業利益率7%を目標に掲げていたため、1年前倒しで計画を達成する予定だ。

 実はホンダの歴代社長で決算発表の記者会見に出席したのは三部氏が初めてだった。意外に思う人も多いだろうが、ホンダでは創業者である社長の本田宗一郎氏が技術面を担当し、創業時から氏を支えてきた藤沢武夫副社長が管理面を担当していた。その系譜がこれまで続き、決算発表は管理系の副社長が仕切る「伝統」があった。

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