三部氏は「営業利益率の目標達成時期が前倒しできることを自ら宣言したかった」と説明すると同時に、「株価純資産倍率(PBR)が1を割っており、大きな課題と受け止めている」とも語った。
PBRとは、株価を1株当たりの純資産で割った値で、投資判断の目安の一つとなる。
PBRが1を割ると、その会社が保有する純資産よりも株式の時価総額が低いことになり、一般論として会社を解散したほうが株主のためになると言われる。5月31日時点で、トヨタのPBRは1.34なのに対し、ホンダは0.67しかない。いまだ株主からの評価が低い点に三部氏以下、ホンダの経営陣は大きな危機感を抱いている。
業績的には復活を遂げたホンダだが、この数字が示すようにここまでの道のりは険しかった。この点を検証するため、過去十数年のホンダの経営状況を振り返ってみよう。
三部氏から見て先々代の社長である伊東孝紳氏が2012年、世界販売600万台の目標を掲げ、派生車種を増やして生産能力を増強した。当時の販売実績から倍増させる野心的な計画だったが、「安く、早く」車を開発することを強く現場に求め過ぎたため、品質問題が多発した。
その象徴が、2013年の最量販車「フィット」での度重なる大規模リコールだった。しかもホンダでは「大企業病」が進行。挑戦的な社風が失われ、こうした組織風土を嫌い若手技術者が大量に退社したこともあった。