近年の大阪は万博やIR(カジノを含む統合型リゾート)、日本維新の会の政治家の威勢の良い発言などで、表向きは“盛り上がり感”があるが、河合氏はこう指摘する。
「昔から大阪には東京への“対抗意識”のようなものがあって、東京が五輪をやるなら大阪は万博、東京がディズニーランドなら大阪はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)というように、東京と並ぶ東西の“二大軸”だという意識が見られる。しかし、万博もUSJもIRも魅力的だけど内部で完結してしまう“点”になるだけで、そこからどう他の産業や地域全体の発展へ結び付けていくのかというビジョンがいまひとつ見えない。
その点、名古屋は裾野の広い自動車産業があるのが強み。大阪はこのまま衰退すれば名古屋に抜かれるような形になる。今後は日本国内での立ち位置を気にしたり、東京への対抗意識を持ったりすることに意味はない。名古屋の自動車産業のように、世界に向けて打ち出せる魅力や特徴を創っていくべきでしょう」
“高齢者の受け皿”の限界
人口減少と高齢化によって沈みゆく大阪は、「そう遠くない東京の姿」でもあるという。
「地方圏は高齢者を支えるマンパワーやサービスが行き渡らないため、現在、大阪は近隣県の高齢者の受け皿とならざるをえない状況になっています。すでに東京圏でも現役世代が年老いた親を呼び寄せるケースが目立ってきています。
一足早く高齢化が進む大阪で、ひとり暮らしの高齢者が増加してキャパシティが足りなくなれば、大阪圏から東京圏へと若者だけでなく高齢者もどんどん押し寄せることになるでしょう。沈みゆく大阪が、東京に集まる高齢者の一大供給源になる──そんな未来が近づいているのです」
※週刊ポスト2024年6月21日号