55年ぶりの万博開催まで1年を切った大阪。インバウンドの活況がある一方、“維新旋風”には陰りが見え、衰退が加速しているとするデータもある。大阪の企業や産業に深刻な課題が出てきているというのだ。阪神タイガース優勝などの経済効果の算出で知られる宮本勝浩・関西大学名誉教授が言う。
「企業が大阪から東京に本社を移す動きが止まりません。関係者に話を聞くと、やはり“東京はビジネスチャンスが多い”という理由が大きいようです。他社との情報交換もしやすいといいます」
帝国データバンクの調査によれば、昨年、大阪府へ転入した企業は155社ある一方、転出した企業は196社。1982年以降、42年連続の転出超過だ(「大阪府・本社移転企業調査2023年」より)。大阪のイメージが強い住友財閥系の企業でさえ、合併などで本社機能を東京に移す例が目立つ。武田薬品工業のように登記上の本社は大阪のままだが、東京に「グローバル本社」を置く例もある。
「人材も東京へ出ていきます。大阪でもベンチャー育成の学会などを作って取り組んでいますが、ようやく育ってきた頃にみんな東京に行ってしまう。そんな悪循環です」
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