野原さんの指摘の通り、60才以上が陥りがちな失敗例が「退職金で投資を始める」というもの。とりわけ不動産投資には、いくつもの罠が潜んでいる。『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』の著者で、IFA(独立系金融アドバイザー)のリーファス代表・西崎努さんが言う。
「不動産投資は、物件探しから税金や修繕といったコスト管理まで、すべて自分で行わなければならず、かかる労力を考えれば起業するようなもの。
いまの時代、数千万円の退職金で購入できる物件の中にはすぐに買い手・借り手がついて利益につながるような『好物件』はほとんどありません。高齢のかたでもローンを組める可能性はありますが、もしその物件が売れずにローンだけが残ったら、文字通りの“負動産”になってしまう」
不動産投資は、物件を購入する“初期投資費用”がほかの投資より格段に大きいため、失敗したときのダメージの規模が桁違いなのだ。
外貨建て保険に潜む数々のリスク
退職金を元手に始める人が多い“安心を買う”投資にも落とし穴がある。運用しながら“いざというとき”を見据えて保険を投資先に選ぶパターンだが、これもおすすめできない。
「退職金が振り込まれると、必ずといっていいほど銀行から提案がある。その代表例が外貨建て保険です。すべてが悪い商品とは限りませんが、手数料を初年度に10%近く取られるものも多いほか、解約控除が高く、始めたらなかなか解約できない。しかも保険である以上は運用よりも保障がメインなので、ほかの金融商品と比べて運用効率が低く、お金が増えにくいというデメリットも。
せめて複数の商品や金融機関で話を聞いて充分に検討し“よくわからないまま加入する”という事態は避けてほしい」(西崎さん)
※女性セブン2024年6月20日号