結果、「安くて新鮮なものがある」と言われた黒門市場のイメージとかけ離れ、日本人の客の足が遠のいていった。その後、コロナ禍で外国人観光客は消えたものの、アフターコロナの今は再び外国人観光客が戻ってきている。
「コロナ禍の3年間で30~40軒の店が辞めたが、そこに中国資本が入ってきたんや。もちろん非組合員。賃貸で店を出しているケースがほとんどで、もとの店の持ち主が1棟貸しするから家賃は最低でも月50万円、高いと200万円と言われとるわな。それで商品の値段を高くせなあかんという理由もあるみたい。外国語が話せる店員も雇わなあかんしな」(前出・鮮魚店店主)
休業店舗が出ると数10社の不動産業者が殺到
そうして「黒門市場マップ」に掲載されない店舗が増えているわけだが、新たな問題も出てきているという。
「組合としても、『清潔な商店街にしたい』とゴミステーションを作り、清掃員を雇う。ゴミの処理だけでも年間300万円かかる。トイレも2000万円かけて2か所設置して、トイレットペーパーが月5万円、水道代も月5万円かかる。それを組合員だけが負担している。問題山積ですわ」(前出・飲食店店主)
とはいえ、黒門市場への新規参入を狙う業者は今も多いようだ。今年3月末に老舗の割烹店がビルを建て替えたいと休業の張り紙を出した途端、「売ってほしい」「貸してほしい」と数10社の不動産業者が殺到したという。
「外国資本だけやなく、大手ドラッグストアも空き店舗がないか出店担当者が直接探しにきているぐらいや。あまり繁盛していない老舗の店舗に好条件で貸してほしいと持ち掛けとるそうや」(前出・飲食店店主)
黒門市場商店街振興組合に取材すると「インバウンドに関する記事の取材はすべてお断りしている」(事務局)と回答した。大阪万博に向けて「なにわの台所」はまだまだ姿を変えそうだ。
撮影/杉原照夫