徹底的にワンオペ問題と向き合った末のシステム構築
すき家の効率化と好待遇はいかにして成り立っているのか。外食産業ジャーナリストの中村芳平氏が語る。
「ゼンショーHDはワンオペ問題で叩かれた後、徹底的に問題と向き合った。創業者で会長の小川賢太郎氏は世論の矛先が奥様にまで向き、泣いたと言われます。それを契機にオートメーション化を徹底し、ワンオペを減らすためのシステムを構築したようです」
人手不足により各業界で人材の取り合いとなる中、働き方改革で従業員を確保。さらに「徹底したコストの見直しによる利益率の追求が従業員の好待遇を支えている」と中村氏は続ける。
「ライバルの吉野家はアメリカ産牛バラ肉にこだわるため仕入れ値を下げられないのに対し、ずっと以前からすき家はオーストラリアやカナダ、メキシコなど産地を分散して牛肉を仕入れているので、現在のアメリカ産牛肉の価格高騰に対応できている。
また、北海道に農場を所有し、マルヤなど食品スーパーを経営することで自社で育てた牛を1頭まるごと流通させてどこの部位も無駄にすることがない。ゼンショーHDの“経営のスケールの大きさ”は同業他社と比べものになりません。
世界を視野に入れた『MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)』とゼンショーHDは呼んでいるのですが、牛丼の原料の仕入れから加工、製造、流通、店舗での販売までを一貫して行なえる強さが同社の持ち味。2025年3月期には外食産業初の売上高1兆円超えは確実で、30年まで毎年賃上げし、人材確保を最重要課題とするようです」
かつて問題視されたワンオペ問題を乗り越えて、すき家は労働環境の改善に向けて突き進んでいる。
【6月13日13時40分追記:記事の内容を一部修正いたしました】