「ファンが増えないのでは」という素朴な疑問も
映画を見に行く機会が増えた人もいる。メーカー勤務の20代男性・Bさんは、「特典をコンプリートしたい友人に付き合わされることがある」と言う。
「特典を集めているから、一緒に言ってくれと頼まれます。僕自身、アニメ作品は好きだけどグッズに興味はないので“需要と供給”が一致しているという感じ」
そんな友人に付き合ううちに、Bさんの心にはふとした疑問が浮かんでしまった。
「たとえば1人で5回見に行っても、5人が1回ずつ見に行っても、映画供給側の収入的には5回分ですよね。でも1人が5回ではファンは増えないわけだから、いつかジリ貧になってしまうんじゃないですかね……」(Bさん)
隣の席の人から「交換して」
映画館で困惑した人もいる。金融機関勤務の40代男性・Cさんは、普段はアニメ作品を見ないが、学生時代に見ていた人気アニメの続編が公開され、見に行った時のこと。隣の席に座る人から、「特典の交換」を持ちかけられたという。
「開封した特典を見ていたら、隣の席の人からの熱い視線に気づき、顔を見た途端、『交換して下さい!!』と懇願されたことがあります。最初、何を言われているのか理解できませんでした。驚きとともに、ちょっと怖かったですね。特典はどうせいらないのであげました。
その時思ったのは、特典がいらない人は、その場でほしい人にあげられる仕組みがあればいいのにと。実際、不要な人にとってはゴミ箱ゆきですからね……」
集客手段としてますます重宝される入場者特典。サブスクが普及する中で、映画館に足を運んでもらうための仕掛けではあるが、無駄が出ないような工夫も必要なのかもしれない。(了)