ペアローンの売り文句を鵜呑みにしてはいけない
資金計画を立てる際は、次の3点を意識すべきです。
【1】借りられる金額の最大値=予算と考えない
【2】将来的に、夫婦の片方が働けなくなるなど、収入が大幅に減るリスクも考慮する
【3】現在、賃貸のマンションに住んでいるなら、住宅ローンの月々の返済額が今の家賃を大幅に上回らないようにする
元気で共働きをしているときは、ずっと2人で働いて返していけばいいと思うものですが、時とともに状況は変わり、出産、育児、病気、介護などで夫婦のどちらかが離職せざるを得なくなることも、十分にあり得ます。もちろん、ペアローンの残債は残るので、収入が激減して高額の返済に追われる羽目に。そもそもペアローンを前提としなければ、身の丈に合わないほど高額の借入をする状況を回避できます。
物件を売りたい販売会社側が、ペアローンを提案してくることもあるかもしれません。その際、「ペアローンだと住宅ローン控除をダブルで受けられて、節税効果が大きくなる」とか、「マイホームを売却すると、譲渡所得から最高3000万円までを控除できるという特例があるが、ペアローンだと夫婦それぞれに控除が適用されるからお得」などの売り文句を聞かされることもあるでしょう。
それらは間違いではありませんが、節税効果が2倍になる分、住宅ローンを2本組むことで事務手数料や印紙代といった各種手数料も2倍になることを忘れてはいけません。
また、共有名義であるがゆえに、離婚したときにもめやすいという問題もあります。家を売って清算するだけなら話は簡単ですが、夫婦のどちらか一方が住み続けたい場合、ローンを一本化する手続きが難航しがちです。一本化した後の名義人一人分の収入が足りず、再度住宅ローンの契約を結べない場合が多いからです。先々のことを考えるなら、ペアローンはデメリットもあると認識しておきましょう。
※長嶋修・著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ):1976年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。1999年、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」創業。著作に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』など多数。最新刊は『マンションバブル41の落とし穴』。